チームラボ ボーダレス 体験レポート その2

場とテクノロジー
前回記事からの続きです。

これは他者とともに創っているのか?

壁に記された作品の説明文章から感じたのは、「小難しい話が好きで、詩人体質なのかな。だけど、現実の人間や本当の意味での他者に興味がないか、苦手なのかもしれないな」ということ。

文章には「他者とともに創る」とあったけど、あの作品に“他者”はいなかったでしょう。
センサーを作動させるためのヒトという動物がいただけ。
ある一定の温度や肉としてのボリュームを持ち、各々の思惑に沿って作品内を動く生き物がいれば、それは「ヒト」でなくてよいし、ましてや「〇〇県でこんな両親からDNAをもらって生まれ、こんな恋をし、こんなことを学び、今はこんな仕事をして社会を構成し、今日はこんな理由で、今、この会場にいる」という情報は一切必要なかった。

これを「他者とともに創る」(文章にそう書いてありましたよね)とか言われて、腹が立った。
正直にこうして書くのは躊躇われるのだが、そうだったのは事実だ。
「あなたはどれほど他者と深くかかわったことがあるんだ!みんな必死で生きとるんだぞ!それ知ってて言うんか!」という怒りのような感情がわいてくるのは、ワークショップやファシリテーションという、時に醜さや不安や劣等感や妬みから逃れることができない生身の人間同士で物凄く深く触れあわざるを得ない分野にいるからかもしれない。

怒りとは、二次感情だ。
傷ついた、攻撃された、そういう最初の感情から転じて怒りとなる。
今回の一次感情は何だったのか。
それは、私や他者の、個々の人格は必要としていないくせに(必要だったのは動き回る肉体だけだ)、他者と創ってますとうそぶかれたように感じ落胆したからだ。

他者に影響できる力をどう扱うか

ああでも、アーティストってそういう人多いのだよね。
自分以外の人間より、自分(の作品)に興味がある感じ。

創作活動や表現をするワークが理屈抜きに好きだ、楽しい、癒されると感じる私自身も、間違いなくその気があるのだ。同族嫌悪も怒りの原因だ。

プロジェクションマッピング1にしろ、ダンス等の身体表現にしろ、ファシリテーショングラフィック2にしろ、言葉で発信する以外のコミュニケーション技術をもっていることは、ファシリテーションという言葉に希望を感じその道に携わるものにとって強みになる。
他者や場に大きく影響を与えうる力だからだ。
良質な道具なのだ。

だけども、その道具を持っていることや道具のスペックが良い(例えば絵が上手い)ことと、生身の人間同士のコミュニケーションを理解しているとか、ましてや集団を促進する能力があることとは、全く、全然、ちっとも、毛先ほども、0.001%も、関係ない。

そのことを腹の底から自覚し、一瞬たりとも忘れず、そのうえで他者と関わろうとしなければ、思わぬ傷を負わせてしまう。いや、他者と関わることはそもそも傷を追う可能性が含まれている、だからすべての傷を避けることは不可能だ。

促進(ファシリテーション)しようと意識しようがすまいが、とにかく、自分の一挙手一投足が相手に傷を負わせる可能性があると体感で知っていなければ、いざ意図に反して傷を負わせたときにそのサインに鈍感になってしまう。見落としてしまう。その切迫感を平常は忘れていること、それを不意に思い出させられたから安易な「他者とともに創る」を目にして衝撃を受けたのだ。(とはいえファシリテーターも魔法使いでなく生身の人間なので、ファシリテーターの役割を担う時間以外はこの真実を忘れないと日常生活に支障を来すことはご理解いただきたい。)

一緒に出かけたことで縮まる心の距離感

いっそ、あれらの説明テキスト群が会場に存在しなければ良かったのに。

作品だけがあって、参加者それぞれと作品が触れ合い、個人の内で何かが起きて、それでアートとして完成、ではいけなかったのだろうか。

であれば別の感想を自分ももてた…いやいや。それでは何も残らなかった。

実際このレポートを書こうとしなければ、私の意識に残る記憶は、一緒にこのイベントに行った株式会社U. 3のお二人と話せば良かった、今度お話したいなぁ。それだけだったはずだ。 <続く>

記:ワークショップ設計所 後藤
同じ著者の読みもの

連載タイムライン

付録

  1. プロジェクションマッピング:建築物や凹凸のある壁面、空間などスクリーンではない立体物の表面に、プロジェクターで映像やCGを投影する技術あるいはパフォーマンスを指す。近年は音楽、スポットライト、レーザー光線などと組み合わせて使われる。東京ディズニーランドやハウステンボスでも実施され注目を集めた。
  2. ファシリテーショングラフィック:談話や話し合いなどを、文字に加えてイラストやキーワード、記号などを用いて、参加者全員に見えるように書く(あるいは描く)行為。「グラフィックレコーディング」「グラフィックファシリテーション」とも呼ばれる。(関連記事:場の描画技法: 〈ファシグラ〉場の描画技法: 〈グラレコ〉場の描画技法: 〈グラファシ〉グラフィックレコーディングと呼ばれる技法(あるいはファシリテーショングラフィックと呼ばれる技法)について など。)
  3. 株式会社U. :「インタラクション(体験型)」を得意とするデジタルメディアコンテンツ企画・制作会社。所在地は兵庫県神戸市。https://yuuu.jp