場の描画技法: 〈グラファシ〉

ファシリテーターの思想
場の技法シリーズの10回目をお送りいたします。
今回は「描画」の技法の1つ、〈グラファシ〉について記しました。

〈グラファシ〉とはグラフィックファシリテーションの略称である。〈ファシグラ〉と似ているが少し違う。〈ファシグラ〉は、ファシリテーションのためにグラフィックを用いる。〈グラファシ〉は、グラフィックを用いてファシリテーションする。つまり、〈ファシグラ〉は、ファシリテーターが必要と判断したときにグラフィックを活用する一方で、〈グラファシ〉ではグラフィックによってファシリテーションするのである。

〈グラファシ〉は、言葉・ロジック・文書などに普段から偏りすぎている空間に対して有効に働くことが多い。たまには、絵・イラスト・色で言語の檻から出てみようではないか、こういうわけだ。だから、〈グラファシ〉はどこか水彩画のような表現が用いられることが多く、また、文字が少ない。マジックペンで描かれるようなしっかりとした輪郭の線よりは、境界線の曖昧なふんわりとした色使いやグラデーションのほうが、言葉・ロジック・文書の世界から距離をとりやすいからだ。

描き手の印象でグラフィックが出来上がる点は〈グラレコ〉と同じだが、ファシリテーターとしての確認・介入・修正が許されるため、権威(authority)は公平性が担保される。〈グラファシ〉の結果、残されるものの作家(author)はその場の全員である。(〈グラレコ〉の作家(author)はどこまでもその描き手本人のみである。)言語偏重の場になんらかの課題を感じるときは、〈グラファシ〉を話し合いに持ち込むのもよいだろう。

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技法は、単体ではどんな場でも機能しない。状況を、「事前」と「今、ここ」の2回ある機会を活用することで適切に見極めて複数の技法を重ねる必要がある。
訓練を受けたファシリテーターを複数存在させることも有効だし、さらには参加者を巻き込んで技法選択を検討できるとなお良い。
各技法は、前後の技法の接着面を「場の設計技法」によって明文化することで初めて機能する。単体の技法のみの安易な導入は、場の失敗につながる。組織内の信頼関係を毀損しかねないばかりか、下手をすると一部の仲間に心の傷を負わせるリスクが発生してしまう。十分な善意と設計を熟慮してその場に臨むことがファシリテーターの義務であることを踏まえて、各種技法を活用して欲しい。

記:ワークショップ設計所 小寺
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