前回記事からの続きです。
今回は印象に残ったことを脈絡なく。
滝の流れる部屋で
足元に水が流れているところにしばらく立っていると、自分を避けて水がわかれるという仕掛けがあった。
個人的に水が好きなこともあり、ここはしばらく足元で遊んでいた。とても楽しい一人遊びだった。
同じく滝の流れる部屋で
壁面の上部から文字(習字のような楷書体の漢字一文字)が降ってきて、それに触れると手に吸い込まれる仕掛け。なにこれ、魔法みたい!と楽しかった。字の持つ力を自分が取り込んだ気がした。だから、取り込む字を選びたいなと思って、そうした。(取り込んだ字が記録されて、その日の思い出として手元に残ったら面白いのになぁ)
手描きの魚が泳ぐ水族館
用意された塗り絵用紙に、用意されたクレヨンで好きに色を塗る。できあがった作品をスキャナで取り込むと、壁面に映し出されたデジタルな海底でその魚たちが泳ぎ始めるというもの。サメ、クラゲ、タツノオトシゴなど様々な種類の魚が100匹以上ゆらゆらと壁面を泳ぎ回る。
この体験展示は、もっとも「他者」を意識した。
ひとつとして同じものがなく、国籍も年齢も違うひとりひとりが描いた魚たち。ああ、誰かが今日ここにいて、描いていったんだなとまざまざと感じた。(とはいえ交流は起こっていない。ひとところに同時に個人がいたに過ぎないのだけれど。)
花の森エリアで、鳥(の形を模したデジタルな光)が壁や部屋を越えて飛びさった瞬間
壁を越えて動かれると、これ何かすごいなと素直に思う。
もしかして技術的には難しいことなのだろうか?
花でできた動物
動物にはさして興味がないのだが、妙に印象にのこった。
動きがとてもリアルだったからだろう。
生身の動物は臭いがどうしてもあわなかったり、アレルギー反応が出たりして触りづらいが、この動物とは一緒に歩ける。目があった気分さえ味わえる。すべては錯覚で、本当に通じ合ってはいないのだけど、それでもとても気分が高揚した。
狼など普通は一緒に歩いたら危険だけど個人的に好きな動物と歩けたのはとてもうれしい。
ナウシカ1とかアリス2になった気分。
相対的に速い動き(鳥、風、雷)全般
ふわ~としたものが漂うなかで、それらを貫いてビュッと走る光達と、それに触れる体験をした。私はゲームでもマンガでも昔から戦士より魔法使いに憧れがあり、雷を落としたり水流を走らせてみたいと思っていた子ども時代の自分が喜んでいた。
次は自分でそれを使うような体験ができないだろうか。
ただし、人目に晒されない場所で。
蝶々
会場のどこかに、「人が殺せば蝶は飛ばない」「生まれた蝶の数が(参加者たちによって触れられることで)死ぬ蝶より数が多ければ、この部屋に蝶が舞い続けるける」というコンセプトの作品があった。
一見感心したのだけど、結局部屋から出ようとすると蝶を殺さず出ることは難しい仕組みになっていた。殺したくないと思っても、殺してしまう体験をさせるようになっているけど、どういう意図があったのだろうか。他の生き物を殺さずには生きていけない人間に生まれた罪を自覚しましょうとでも言いたいのだろうか?
こういうとこが惜しいのだよね。
後味が悪かった。
ランタンの部屋
じゃらんの記事では感心されていた3けど、これは私はあまり楽しくなかった。
連鎖する様子がいまいちわからなかったし、「他者の光と出会う」と文章では説明されていたが、実際の現場では自分には知覚できなかった。
また、混んでいたため、かなり早く「はい終わりでーす」と追い出されたせいもある。
ただし、このランプ配置の出し方(数式)は面白かった!
これは空間そのものより、その制作過程が作品として面白かったケースだ。
デジタルアート、ではなくて
「未来の遊園地」で記憶に残ったのがアスレチックと床に敷き詰めたクッション、遊園地内のデコボコした山状のブロックを歩いたときに足裏に感じた傾斜と、感じたスリル。
日常では味わえない体感をした。
ちょっと危険と感じる角度の傾斜もあり、そこがまた面白かった。
会場では親切にも足袋のような履物を貸出ししてくれており、それを履いて歩いたのだが、ストッキングだったためか、履物の中で摩擦が足りなくて滑る滑る。
なるほど、靴下選びって大事だなということを身体を通して学習できた。
香りと音と
全体的に視覚の活用はよかった。
それに比較すると、音(聴覚)は展示『無限の透明』以外ではあまり活用してなかった印象。外部情報をとりこむデバイスである感覚器官は目だけじゃないので、もっと色々アイデアは出せるんじゃないかな。
ただし『無限の透明』という作品だけは違った。基本一般受けするように作られたように見える作品群のなかで、あれだけは違った。和風のお香が炊かれていた。祭囃子や神楽のような音楽も、展示スペース内で、たぶん均一に鳴らしてはいなかった。
作品の奥へ足を踏み入れるほど、闇と光と音楽とリズムと香りに翻弄され、どこか別の世界にとりこまそうで頭がぼうっとしていく。
人によっては恐怖を感じるであろう作品だ。
あの作品は、そこだけ異様な世界、ひとつの世界観を表せていた。お化け屋敷のような、どこか懐かしいような、母胎回帰のような、平安時代へのタイムスリップのような。それこそ言葉で表現できない感じるしかない作品であった。
作品は複数のクリエイターが作っているであろうから、『無限の透明』の作者は特にセンスがいい人なんだろう。視覚に偏らず、統合された1つの世界を感じられる作品だった。
<続く>
記:ワークショップ設計所 後藤
同じ著者の読みもの
連載タイムライン
付録
- ナウシカ:宮崎駿による漫画作品、アニメ作品『風の谷のナウシカ』の主人公。蟲と呼ばれる異形の生物が住まう原生林のような森が物語の中心となる。
- アリス:イギリスの作家ルイス・キャロルによる児童小説『不思議の国のアリス』の主人公。白ウサギを追いかけて不思議の国に迷い込み、チェシャ猫、眠りネズミ、イモムシといったさまざまなキャラクターと出会う。
- じゃらんの記事:初めてでも楽しめる!「チームラボ ボーダレス」おすすめ作品5選【お台場】