場の導入技法: 『ハイファイブ』

ファシリテーターの思想
場の技法シリーズの3回目をお送りいたします。
今回は「導入」の技法の1つ、『ハイファイブ』について記しました。

ハイタッチを英語でいえばハイファイブである1。別に言葉遣いはどちらでもよい。ハイタッチかハイファイブかのどちらの言葉を実際に発話するかはその場の《ねらい》と《タネ》に合わせて決めればよい2

この導入技法は、学生や若手が参加者に多い空間では有効であることが多い。妙に盛り上がる。しかし、成人を対象にこの導入技法を選択する場合は、「なぜハイファイブをここでするのか?」を明確に説明できねばならない。(必ずしも説明を行うが必要があるわけではない。仮にたずねられたときにいつでも明確に応えられるよう準備しておかねばならない。)場はいたずらに盛り上げればいいというわけではない。優しくまた人格者である方が多く参加していれば、(なぜか)ハイファイブをして欲しいと告げるファシリテーターを気遣って、”仕方なく”盛り上がってくれることもあるだろう。場が一見盛り上がっているからといって、「この空間はとても盛り上がっている」と状況を即断してはいけない。(ましてや導入期にハイファイブをするだけで大盛りあがりしている方が不気味だ。その進行者は我が闘争でも実践したいのだろうか。)何か盛り上がって欲しい理由があるからファシリテーターは盛り上がるであろうことが期待できる技法を選択する。そしてその理由はファシリテーターの独りよがりではいけない。この場の誰しもにとってよいであろうとファシリテーターが確信できる理由によって技法を選択する必要があるし、求められたときは技法の選択理由を参加者に率直に開示せねばならない。

技法は、単体ではどんな場でも機能しない。状況を、「事前」と「今、ここ」の2回ある機会を活用することで適切に見極めて複数の技法を重ねる必要がある。
訓練を受けたファシリテーターを複数存在させることも有効だし、さらには参加者を巻き込んで技法選択を検討できるとなお良い。
各技法は、前後の技法の接着面を「場の設計技法」によって明文化することで初めて機能する。単体の技法のみの安易な導入は、場の失敗につながる。組織内の信頼関係を毀損しかねないばかりか、下手をすると一部の仲間に心の傷を負わせるリスクが発生してしまう。十分な善意と設計を熟慮してその場に臨むことがファシリテーターの義務であることを踏まえて、各種技法を活用して欲しい。

記:ワークショップ設計所 小寺
同じ著者の読みもの

付録

  1. ハイタッチは和製英語であるため英語圏では通じない。手の五本指(ファイブ)を、高い場所(ハイ)で合わせることからハイファイブと呼ぶ。
  2. 《ねらい》に関しては場の設計技法: 《ねらい》を参照するとよい。《タネ》に関しては読みもの「場の設計技法: 《タネ》」を参照するとよい。