場の収束技法: 『一時決定』

ファシリテーターの思想
場の技法シリーズの5回目をお送りいたします。
今回は「収束」の技法の1つ、『一時決定』について記しました。

論理や理由を無視して、各々が直感的に結論だと思うことを、白紙などにひと言で書いてもらう技法である。十分にアイディアの発散や検討が行われていれば、人の直感は思った以上に鋭いもので、全員が同じ落とし所を考えていることがよくある。結論にたどり着くために、なにも教科書のような美しい手順を踏む必要はどこにもない。
もし結論できないようであれば、出された各人の一時決定を素材にまた発散の作業を始めればよいだろう。ファシリテーターだけでなく、その場の全員が常にこの話し合いを終えるころには最高の結果が生まれるであろうビジョンを常に共有し続けていることが重要だ。ファシリテーターの独り相撲では良質な結論にチームは決してたどり着かないし、よしんばたどり着いたように見えたとしてもそこには全員の納得は少なく今すぐ手掛けたいと思えるモチベーションも伴わない。

技法は、単体ではどんな場でも機能しない。状況を、「事前」と「今、ここ」の2回ある機会を活用することで適切に見極めて複数の技法を重ねる必要がある。
訓練を受けたファシリテーターを複数存在させることも有効だし、さらには参加者を巻き込んで技法選択を検討できるとなお良い。
各技法は、前後の技法の接着面を「場の設計技法」によって明文化することで初めて機能する。単体の技法のみの安易な導入は、場の失敗につながる。組織内の信頼関係を毀損しかねないばかりか、下手をすると一部の仲間に心の傷を負わせるリスクが発生してしまう。十分な善意と設計を熟慮してその場に臨むことがファシリテーターの義務であることを踏まえて、各種技法を活用して欲しい。

記:ワークショップ設計所 小寺
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