場の導入技法: 『背伸び』

ファシリテーターの思想
場の技法シリーズの11回目をお送りいたします。
今回は「導入」の技法の1つ、『背伸び』について記しました。

全員で両手を思いっきり上へ伸ばす。それだけ。座ったままでもよい。立ち上がれる雰囲気があるのならばそれもよいが、無理に立ち上がって貰う必要もない。背伸びによって自ずからリラックスした表情になり、場の雰囲気が和らぐことが期待できる。ファシリテーターも一緒にググーッと伸びるとよいだろう。

リラックスした状態は創造性を高める。シャワーを浴びているとき、湯船の中で一息ついたとき、夜寝入る直前、人はアイディアをひらめきやすい。また、東京オリンピック前年となる今年は、スポーツに関する話題には事欠かないが、一流のスポーツ選手は例え競技中でも「緊張」と「リラックス」を適切に使い分けることで、必要なときに100%パフォーマンスが出せるようメンタルトレーニングをしているそうだ。
こちらは、経営組織論と理論経済学を専門とする富山国際大教授の村瀬(2014)の指摘だ。

リラックスした状態でひらめきが生まれる。

村瀬直幸「創造性はいかに生まれるか」『富山国際大学現代社会学部紀要』第6巻, 2014. 3, 235.

働きかけ例

『背伸び』を実施する際、たとえばファシリテーターはこんな風に参加者に働きかけてみるとよいだろう。「人はリラックスしたときに「ひらめき」が生まれるといいます。今日の話し合いでも、みなさん各々によい「ひらめき」が浮かぶよう話し合いを始める前の簡単なストレッチとして背伸びをしておきませんか。」
もちろんこの働きかけ例は「ひらめき」をあまり重視しない話し合いの導入時には使えないので注意されたい。別のことを重視する話し合いの導入時において、ファシリテーターがどんな働きかけをすればこの導入技法『背伸び』が促せるかは、ワークショップ設計士が答えてくれるだろう。

技法は、単体ではどんな場でも機能しない。状況を、「事前」と「今、ここ」の2回ある機会を活用することで適切に見極めて複数の技法を重ねる必要がある。
訓練を受けたファシリテーターを複数存在させることも有効だし、さらには参加者を巻き込んで技法選択を検討できるとなお良い。
各技法は、前後の技法の接着面を「場の設計技法」によって明文化することで初めて機能する。単体の技法のみの安易な導入は、場の失敗につながる。組織内の信頼関係を毀損しかねないばかりか、下手をすると一部の仲間に心の傷を負わせるリスクが発生してしまう。十分な善意と設計を熟慮してその場に臨むことがファシリテーターの義務であることを踏まえて、各種技法を活用して欲しい。

記:ワークショップ設計所 小寺
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