セミナーとワークショップの違い

ファシリテーターとは、ワークショップとは
「○○セミナー」「○○ワークショップ」
10年前に比べると、こう名付けられた催しがずいぶん増えたように思います。
皆さんはどれくらい参加したことがあるでしょうか。

 

セミナーは、たとえばこんな印象でしょうか。

「社長や学者など、立派な経歴の方がご自身の経験や知識を披露するイベント」
「まだよく知らない知識の解説をきく(例えばSDGsってなんだろう?)」
「ときに眠いが、眠ってはいけない」
「ずっと椅子に座っている」
「最後に質疑応答がよくあるが、質問するのに勇気がいる」

 

ワークショップはどうでしょう。

「一方的に話を聞くばかりではなく、隣の人と話したり、紙に何か書いたりする」
「グループで座って共同作業をする(例えばカラフルなブロックを使って家の模型をつくったり)」
「グループで1つのテーマについて語りあう(最近あったグッドニュースとか)」
「グループで感想をシェアすることが多い」

 

でも、こんなイベントありますよね。
立派な経歴の講師から話を1時間くらい聞いた後に、グループで感想を5分話し合って、会場全体にグループの代表者が何を話したか3分ずつで発表して、司会が最後になにか言って締め括り、ケータリングで交流タイムにはいる。
これは……セミナーでしょうか、それともワークショップでしょうか?

 

意味と語源

「セミナー」と「ワークショップ」、ついでに「レクチャー」を加えて、意味と語源を調べてみました。

【レクチャー】
意味:講義。講演。説明。「利用法について—を受ける」 [広辞苑より]
語源:読む、読み聞かせる(ラテン語)
【セミナー】
意味:①大学の教育方法の一つ。教員の指揮の下に少数の学生が集まって特定の分野・テーマについて文献購読や発表・討論などを行うもの。演習。ゼミ。セミナー。②一般に、講習会。 [広辞苑より]
語源:ゼミナール(ドイツ語)、議論のための会合
【ワークショップ】
意味:①仕事場。作業場。②所定の課題についての事前研究の成果を持ち寄って、討議を重ねる研修会。教員・社会教育指導者の研修や企業教育で採用されることが多い。 [広辞苑より]
語源:工房

 

語源をたどれば、それぞれの言葉のニュアンスがみえてきます。

セミナーとワークショップはパッと見、似ていますね。
ここで気になることは、ワークショップには「教員・社会教育指導者の研修や企業教育で採用されることが多い。」とある点です。
ワークショップでは、「研修や教育で採用されることが多い。」と書かれ、セミナーやレクチャーにはそのように書かれていません。この意味は、両形式の目的とそこに至るための手段を推測すると見えてきます。

 

セミナーとレクチャー

参加者にとって、セミナー(=ゼミナール)と呼ばれる場の目的はなんでしょう?
簡単にいえばなんらかの知識を獲得することです。

ではレクチャーとセミナーは同じものでしょうか?
知識の獲得が目的である点は同じですが、手段が異なります。

レクチャーは、元々ラテン語で“読むこと” “読み聞かせること”を意味する言葉でした。
つまり受け手はあくまで一人の権威者の視座から情報を受け取るにとどまるといえます。
大学教授といった専門家から、例えば各国の研究成果や専門的知見を聞きたい場合は、このレクチャー形式が望ましいでしょう。

一方でセミナー(=ゼミナール)は、その場の参加者(ゼミ生)の発表や討論を通して知識を獲得する場です。専門家一人の視座から知識を獲得するレクチャーに対して、セミナーは複数人の視座から知識を受けとるのです。知識を獲得するやり方、つまり手段に違いがあるというわけです。
セミナー(=ゼミナール)は、正解がない話題や解釈が人によって分かれる分野・テーマを扱うときに適する形式といえましょう。

 

セミナーとワークショップ

では、「教育や研修に採用されることが多い」とされるワークショップはどうでしょう。

教育や研修において受講者に期待されることは、成長・内省・意識変容・行動変容といった類です。つまりワークショップの目的には、「知識の獲得だけ」ではなく「自分の視座を認識、あるいは再認識すること」が含まれると考えられます。

そのためワークショップでは「複数人の視座から情報を受け取り」、その後「ふりかえりの時間を設ける」。こういう流れがよく用いられるのです。それも、学んだことや受け取った知識をふりかえり整理するだけに留まらず、その学びをどのように自分にとっては受け容れられるか、自分とどこまで現実感を伴って関連付けられるか、こういったことまでワークショップでは踏み込むことになります。

 

まとめ

まとめます。
本稿のタイトルは「セミナーとワークショップの違いとは?」でした。

セミナーは、
「複数人の視座から情報を受け取る。」ことを主な手段とし、
「知識を獲得する」ことを目指す。
ワークショップは、
「複数人の視座から情報を受け取る。」ことを主な手段とし、
「自分の視座を見つめ直す」ことを目指す。

 

つまり、その場の目的に違いがあるわけです。

 

蛇足かもしれませんですが、ワークショップ設計者ではなくワークショップ受講者の目線で、それぞれの言葉を日本語に置き直すと、以下のようにもいえるでしょう。

レクチャー:話をきく時間
セミナー:話を聞きあう時間
ワークショップ:話をききあって、ふりかえる時間

 

皆さんはなんのためにどんな時間を設計し、ファシリテーションしたいですか?

 

参考文献
新村出編(2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.

記:ワークショップ設計所 小寺
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