場の描画技法: 『スケッチノート』

ファシリテーターの思想
場の技法シリーズの13回目をお送りいたします。
今回は「描画」の技法の1つ、『スケッチノート』について記しました。

手元のノートに字・記号・絵・イラスト・色彩などを用いてメモすることをスケッチノートと呼ぶ。広く解釈すればレオナルド・ダ・ヴィンチの手記もスケッチノートと呼べる。要は起こったことを、各人の視点と主観で好きにメモすることがスケッチノートである。図解やイラストが苦手であれば文字だけで箇条書きしても構わない。単語をいくつか白紙に浮かべてあとから矢印でつなぐのもよいだろう。自分自身のためにノートをとる行為は、だれしも一度は経験があるのではなかろうか。

彼/彼女が自由にスケッチノートしたものは、その人の視点を表す。(ちょうど描き手の視点が〈グラレコ〉に即興的に表れるように。)だからファシリテーターは互いの考えや見え方を知り合うための材料として各人のスケッチノートを活用することができる。例えば、「社長の今年度方針発表をなるべくスケッチノートしてください。」と指示し、社長による発表後になにをスケッチノートしたかを見せ合ったり、互いのスケッチノートを元により現場レベルの議論に具体化したりするなどの働きかけ(ファシリテーション)が考えられる。もちろん事前にスケッチノートを他者に見せることに対する《ねらい》1 の説明と同意は必須である。『スケッチノート』をワークショップ設計に組み込むことで、言語以外の表現を促すことにも一役買うため、(〈グラファシ〉と同様、)言語偏重の場を和らげる効果がこの技法にはある。

技法は、単体ではどんな場でも機能しない。状況を、「事前」と「今、ここ」の2回ある機会を活用することで適切に見極めて複数の技法を重ねる必要がある。
訓練を受けたファシリテーターを複数存在させることも有効だし、さらには参加者を巻き込んで技法選択を検討できるとなお良い。
各技法は、前後の技法の接着面を「場の設計技法」によって明文化することで初めて機能する。単体の技法のみの安易な導入は、場の失敗につながる。組織内の信頼関係を毀損しかねないばかりか、下手をすると一部の仲間に心の傷を負わせるリスクが発生してしまう。十分な善意と設計を熟慮してその場に臨むことがファシリテーターの義務であることを踏まえて、各種技法を活用して欲しい。

記:ワークショップ設計所 小寺
同じ著者の読みもの

付録

  1. 《ねらい》とは何か、その成立条件などは読みもの「場の設計技法: 《ねらい》」で詳しく説明している。