場の技法シリーズの20回目をお送りいたします。
今回は「出立」の技法の1つ、『原稿用紙』について記しました。
今回は「出立」の技法の1つ、『原稿用紙』について記しました。
400文字以上を目安に、その終える話し合い(やワークショップ)の感想を1人ずつ綴る技法である。呼称の通り原稿用紙を用いるのも参加者の年齢層によっては懐かしくてよいし、各自スマートフォンやノートパソコンを用いても構わない。(なお白紙や便箋は文字数がわからないため避けたほうが無難である。)
この技法では、箇条書き禁止がポイントである1。主語と述語がきちんと存在する日本語の文章で400文字を書いてもらうのである。箇条書きは情報の断片しか表せない。その情報の主は「私」なのか「私たち」なのか「他人」なのか。主語を明確にした文章を綴ればはっきりする。述語についても同様で、例えば箇条書きにした場合「いま決まった戦略の実施」という文の述語を明確にすれば、その戦略を「実施する」なのか「実施したい」なのか「実施されるとよいだろう」なのか、はたまた「(誰かに)実施して欲しい」なのかを曖昧にできなくなる。
400文字以上を綴った後は、綴ったことを各自心に秘めてそのまま場を終えるのもよい。各自が読み上げても構わないし、互いに読み合う手もある。上長が回収し、3ヶ月後くらいに書き手本人に手渡しするのもよいかもしれない。話し合い(やワークショップ)に残された時間やその場の《タネ》2によって、綴った後の進め方を変えるとよいだろう。
技法は、単体ではどんな場でも機能しない。状況を、「事前」と「今、ここ」の2回ある機会を活用することで適切に見極めて複数の技法を重ねる必要がある。
訓練を受けたファシリテーターを複数存在させることも有効だし、さらには参加者を巻き込んで技法選択を検討できるとなお良い。
各技法は、前後の技法の接着面を「場の設計技法」によって明文化することで初めて機能する。単体の技法のみの安易な導入は、場の失敗につながる。組織内の信頼関係を毀損しかねないばかりか、下手をすると一部の仲間に心の傷を負わせるリスクが発生してしまう。十分な善意と設計を熟慮してその場に臨むことがファシリテーターの義務であることを踏まえて、各種技法を活用して欲しい。
記:ワークショップ設計所 小寺
同じ著者の読みもの
※ 2022年10月より毎月、
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付録
- 箇条書きを禁止できるであろう《ねらい》をぜひ用意して欲しい。《ねらい》に関しては読みもの「場の設計技法: 『ねらい』」を参照のこと。
- 《タネ》について詳しくは、読みもの「場の設計技法: 《タネ》」を参照されたい。