ワークショップはどの業界で使う?

ファシリテーターとは、ワークショップとは

ワークショップはどの業界で使うの?

 

ワークショップのお仕事をなさってるんですね。
どの業界なんですか?

これは最近、とあるイベントで言葉をかわした女性から、私が実際にうけた質問です。
建設関係のお仕事についていて、笑った目元に温かみが漂う素敵な女性でした。

私はしばらく言葉が出せませんでした。
言葉以前に、何と答えるべきか思考がまとまらなかったのです。
(これだから初対面の人との会話は面白い!自分の脳内がいかに狭い枠でものを考えていることかと気づかされます。枠外からこうしてボールを投げてもらうと、自分一人では考えようともしなかった事柄を考える機会がもらえますね)

さて、何と答えましょう。
あまりに長く沈黙はできません。
なぜなら私と彼女はその瞬間、イベントの参加者で、さらにワークショップの最中だったのです。場の進行者から話題が提示され、その話題にそって私たちは会話をしていました。(話題とは「自己紹介をしましょう」です。)

この会話には面白いオチは全くありません。

私はなにやら適当なことをしどろもどろに喋り、質問してきた彼女が

なるほど、業界ではなくて、ワークショップという手法を使いたい場面で活躍されるお仕事なんですね。

と見事に汲み取ってくださいました。
で、終わりです。

はい、彼女の言うとおりです。
私たちがいう“ワークショップ”とは、業界や職種、企業規模などで使う場面をわけられるものではありません。
誰かと協働したい、誰かに何らかの変化、成長、同意や行動を求めたいなど、目的を達成するためのコミュニケーションの選択肢となる「手法」、つまり「やり方」です。

ただ時には、ワークショップを実施すること自体が目的となる場合があります。
ワークショップ(名前としてはイベントやセミナーかもしれませんが)を開催するよ!と告知してしまい、諸事情により中止にできないときなどです。

そのときはせっかく来てくれる参加者ひとりひとりに、ワークショップ企画者がどういう姿勢で相対していくのかが、力の入れ具合を考えるべきポイントになるでしょう。

ワークショップを開くことは、本質的に営業である。

業界を問わず、ワークショップを活用して人に働きかけようとすること、それは本質的に、ある種の営業行為ではないかと思います。
こちらの提案にのってくれないか、とアプローチすることだからです。

営業

1 営利を目的として事業をいたなむこと、また、そのいとなみ。商業上の事業。商売。「午後7時までーする」

2 [法]営利行為を反復かつ継続的に行うこと。また、個人商人が営業活動のために保有する財産を一括して営業ということがある。

広辞苑 第六版より

おっと、調べてみたら、どうも違いました。失礼しました。
「こちらの提案にのってくれないか、とアプローチすること」は、なんという言葉で表すのが適切でしょうか。
もしかして、「提案」という言葉だけでいい?

提案

を提出すること。また、提出した

広辞苑 第六版より(強調引用者)

ついでに「案」も調べてみましょうか。

1 物を置く台。机。

2 したがき。

3 計画。着想。推量。

4 調べること。考えること。思慮。

広辞苑 第六版より(強調引用者)

提案から更に細かく枝分かれしてしまいました。
ここからまた全ての単語を調べるのはやめて、「案」の説明から最も近いものを選ぶこととしましょう。
「着想」とします。

着想

心に浮かんだ工夫。おもいつき。

広辞苑 第六版より

うん、これはよさそうです。何となく表せている気がします。
ではあらためて…

ワークショップとは、こちらの「心に浮かんだ工夫、おもいつき」にのってくれないか、とアプローチする行為である。

おっと、アプローチが曖昧語になっている。言葉って難しい!
アプローチを辞書で調べるといくつか意味があるので、そのなかから「接近すること。働きかけること。」(広辞苑 第六版より)を取り上げます。

ワークショップとは、こちらの「心に浮かんだ工夫、おもいつき」にのってくれないか、と働きかける行為である。

…これならワークショップを表せていそうだ、と申しますか、このへんで今日は一区切りといたします。

 

参考文献
新村出編(2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.