ファシリテーター幻想 〜あるカウンセラーのワークショップ設計録 前編〜

ファシリテーターとは、ワークショップとは

私にとってのワークショップ

私は人見知りの人好きが高じてカウンセラーになった。
一対一の相談業務にやりがいを感じ、気がつけば十数年。
さまざまな環境で、カウンセリングのいわば修行をしてきた私の気持ちが大きく動いたのは、2011年に起こった東日本大震災だった。

自分ができることは何か? 今までの経験を活かしふるさとに貢献できることはないか?
被災地で活躍されている人たちの情報を収集していると「ワークショップ」の文字が目に飛び込んでくる。

「ワークショップ?」

自分も何度か参加者として経験もしているはずなのに、どこか遠くにあるような印象。いつかは、自分の経験に必要なものかも、と何となくインプットしていた。

ワークショップなんて絶対無理!

そんな中、都内でのイベントでワークショップ設計所の方と運命的な出会いをする。
同じ東北出身、「ワークショップ」という名刺の文字。今思えば、その方にまた近く会うだろうと感じたのは、自分の気持ちがすでにワークショップへ近づいていたからだと思う。何事にもチャレンジする、怖いもの知らずな性格ではあるが「自分には絶対無理!」と、ワークショップの世界を畑違いで未知のことだと頑なに捉えていた。それを「来るべき時が来た」と覚悟を決められた発端は、自分がふるさとにできることを考え、さまざまな人たちに触発される中で辿り着いた、一つの出会いだった。

ファシリテーターという幻想

こうして私は、ワークショップ設計所の門を叩くことになる。ワークショップとは? と問われると、正直「分かりません!」という状態でのスタートとなった。しかし、設計所の方々はそんな私にもしっかり寄り添ってくれた。印象に残っているのは、「参加者の質問には何でも応えられるファシリテーター像」を抱いていた私に「分からない質問があったらみんなで考えればいい」との答えが返ってきたこと。何でも引き受けて導くファシリテーターでなくていい、自分らしいファシリテートをすればいい。私の中にあった、飛び込むことをずっと躊躇していた理由が分かった気がして、ワークショップの設計に真正面から取り組めるきっかけとなった。
<続く>

記:地域コーディネーター 海月
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