場の収束技法: 『二次元グラフ配置』

ファシリテーターの思想
場の技法シリーズの23回目をお送りいたします。
今回は「収束」の技法の1つ、『二次元グラフ配置』について記しました。

出されたアイディアを横軸(X軸)と縦軸(Y軸)のあるグラフのどこに配置するかを議論することで、妥結点を模索する技法である。
たとえば、横軸(X軸)に実現可能性を、縦軸(Y軸)に期待できる成果をあてはめて、発散されたアイディアを配置しようとしたとする。このとき、リーダーやファシリテーター一人の考えで配置するのではなく、アイディア一つ一つのグラフ上の位置をメンバー全員合意のもと決めていくことが大切だ。うまく配置できればグラフの右上近くに配置されたアイディアが場の収束先であり妥結点となる可能性が高い。配置箇所で、「A案の方がB案より成果が期待できるだろう」「いやいやB案の方が成果が期待できるのでは?」と意見が分かれるのであれば、そこを論点に再び議論したりダイアログ1したりするとよい。

XとYの各軸にはどんな意味を当てはめても良い。何を2つ掛け合わせるかが、納得のある結論に至れるか(うまく場を収束できるか)を左右する。いつでもどこでも適用できるようなあらかじめ軸名が決まった万能二次元グラフは存在しない2。ファシリテーターはアイディアの内容だけでなく、何が明確になればメンバーが納得できそうかに気を配り、軸名にあたりをつけてこの収束技法『二次元グラフ配置』をメンバーに提案するのがよいだろう。もしグラフに配置後、結論に収束しないようであれば、別のテーマを切り口とした発散3を実施するか、別の二軸で配置し直すか、どちらの選択肢もあり得るため頭に入れておくとよい。

技法は、単体ではどんな場でも機能しない。状況を、「事前」と「今、ここ」の2回ある機会を活用することで適切に見極めて複数の技法を重ねる必要がある。
訓練を受けたファシリテーターを複数存在させることも有効だし、さらには参加者を巻き込んで技法選択を検討できるとなお良い。
各技法は、前後の技法の接着面を「場の設計技法」によって明文化することで初めて機能する。単体の技法のみの安易な導入は、場の失敗につながる。組織内の信頼関係を毀損しかねないばかりか、下手をすると一部の仲間に心の傷を負わせるリスクが発生してしまう。十分な善意と設計を熟慮してその場に臨むことがファシリテーターの義務であることを踏まえて、各種技法を活用して欲しい。

記:ワークショップ設計所 小寺
同じ著者の読みもの

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付録

  1. ダイアログについては、読みもの「場の発散技法: 『ダイアログ』」で解説しているので参照されたい。
  2. 少なくともファシリテーターはそのように思っておいた方がよい。
  3. 発散技法のいずれかを採用するのもよい。