2019/3/19実施「設計図ひもとき会」の話

経営と組織観

キーワードは〈揺らぎ〉〈重層〉〈信念〉〈人間観〉

前回は運営側も含めて5名。今回は6名での開催でした。
設計図ひもとき会の参加者定員は8名。運営人数が2名なので、この会はそもそもから最大でも10名で行う場として設定しています。この人数で時間枠は120分。一定の相互作用や会話が期待できる環境です。参加人数が少なければ少ないほど、濃密な相互作用が起きる余地があります。

運営側で最低限用意している話題提供時間をのぞくと、後半60分ほどの進め方はフリーで、参加者が自分達がその場で選択できる方式です。ひもとき会の醍醐味はこの後半に生成されるやりとりや深まりなのだなと改めて感じた、3月19日の会でした。

前回2月9日のひもとき会では後半は参加者が立ち上がり、どんどん情報整理や対話を進めていきました。2月9日開催レポートの板書やフセン量からも見てとれるように、相当量の情報がやりとりされました。アイディアの発散が迅速に行われ、みんなの興味をあぶりだし、ダイアログ1で深める。2月9日の場を思い返したとき自分の記憶から浮かぶキーワードは、〈明快〉〈透明〉〈交流〉〈知的興奮〉。2月9日の会で起きたことや話されたことはわかりやすく、この会の成果をさまざまな側面から数値化すれば、かなり高得点の場だったのではと個人的に感じています。

今回3月19日の場から感じたキーワードは〈揺らぎ〉〈重層〉〈信念〉〈人間観〉。
何が起きたかをなかなか言葉であらわすのが難しく、またそこにこそ価値があったのではないかとさえ思わされた場でした。私がここで「これこれこういう場であった」と言い切ってしまうのは簡単ですが、それは本当にあくまで個人としてであって、場の参加者たちの合意がとれるであろうとは全く思えません。

2つの離れ小島

あの場には、何かの分断…という表現がもし不穏であれば、離島のように独立した何か主体のようなものが2つ存在していたと私には感じられました。片方の島は自然豊かで様々な素材でできた建築物があり、山から川が流れ海へつながっている。島のものだけで自給自足がそれなりにできています。そのまま島としての寿命を終えてもおかしくない、でもまだ何か作っているまたは作ろうとしている島。家庭的な雰囲気の港があり、馴染みのある商船が定期的にやってきます。
かたや他方は若く活力にあふれた島です。コンクリートの建造物がいくつかできあがり、スピーディに精力的に新しい建物が作られており、島の外側を埋め立てて土地を広げる活動も盛ん。すべてが大変に実用的に見える島。まだ真の闘争も敗北も経験してはいない。それゆえの迷いのなさ。

会の終了間際には、後者の若く活力にあふれた島へ何かが構築されかかったような感じをうけました。構築というのもおそらく適切ではなく、スピーディで若々しい島から、丸太や板っきれが1本2本、島の外へ向かってつながれたようなものでありましょう。その戸惑いに目を注ぎ続けなければ、あっさりと朽ちて海中へ沈んでいってしまうかもしれません。

スピーディで若々しい島のありようは、新鮮さがありながら、私にとって馴染み深い懐かしいものでした。「あなたと話しているとロボットと会話しているようだ」と、とあるリーダー研修でグループの参加者からいわれたことを思い出します。「あなたに人生相談をしようとは思わないだろう」とも。

あの瞬間から10年ほども経った今、記憶の底からふいに浮かび上がるのです。自分でも驚いたことにイヤな感じではない。苦笑して、その鋭く小さい痛みを感じ、それでいながら他者と生きる温かさと満ちたりた感覚がします。そして自分がもう人として若年期におらず、なにか社会に対して役割をもって40代を今まさに生きているのだと痛切に自覚しました。

世界で発行された全書物を自分で読むことはできないのと同様、一生かけても世界に生きる人全員と顔をあわせて話すことはできません。そのなかで幸運にも出会った生身の人間とともに過ごす場で、自分は自分という存在も尊重しながら、どんな「はたらき」をしていくのか?
この問いが、参加者のひとりとして自分が3月19日の会から私が得たものでした。

記:ワークショップ設計所 後藤
同じ著者の読みもの

お知らせ(イベントは終了しました)

次回の「ワークショップ設計図ひもとき会」は5/11(土)です。ご興味のある方は下記よりお申し込みください。

【5/11土】ワークショップ設計図ひもとき会

【5/11土】ワークショップ設計図ひもとき会 by ReSekkei
ワークショップ設計図ひもとき会 ~ファシリテーターの事前準備とブラッシュアップの視点を知る~本会は実施済のワークショップ事例を学習素材とし、ワークショップを設計する際のポイントやそ... powered by Peatix : More than a ticket.

付録

  1. ダイアログについて詳しくは、読みもの「場の発散技法: 『ダイアログ』」をご覧ください。