ロングインタビュー体験より

読みもの

初の長時間インタビュー

生まれて初めて、長時間の個別インタビューを受ける機会がありました。
あまりに面白く興味深く、またワークショップにも通じる部分があったので、記しておきます。

インタビューする、インタビューを受けるとは何か

体験に入る前に、自分が受けたものが確かに「インタビュー」であったのかを確認します。

インタビュー(interview)

会見。特に報道記者が取材のために行う面会。また、その記事。

新村出編(2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.

危ない!
違いました。
会見はしていません。
記事にもなりません。
この辞書に照らせば、あれはインタビューではありませんでした。

実際の様子はこんな感じです。

  • 質問者が2名、回答者が1名。
  • 話題はライフスタイル関連。衣食住のうちの1つです。
  • 時間は約120分。まず簡単な個人作業を行い、用紙に記入したことをもとに質問者からの問いかけに自分なりに回答することを繰り返す。

気になるので似た言葉を探してみました。
恐らく、趣旨からしてマーケティング関連用語を検索すれば近い言葉が出てきそうな気がします……

インタビュー(英語: interview)とは、二人かそれ以上の間での会話で、一方が他方に質問をして情報を得るために行われるものである。インタビューは大きく分けて、評価のためのインタビューと情報収集のためのインタビューの2つに分かれる。

「インタビュー」(2018年8月23日 (木) 04:32 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』より

おや。
マーケティング関連用語を探すまでもなく、「インタビュー」のGoogle検索一覧画面において、実際に体験したものと近いことを記述してあるWikipediaのページが出てきました。
どういうこと? 広辞苑とWikipediaでなぜここまで違うのか気にはなりますが、この読みものの主旨と外れるので深堀ることはやめておきます。

ちょっと道がそれましたが、私が受けたものは「インタビュー」で合っていたようです。
ウィキペディアの説明に従えば情報収集のためのインタビューでした。

新鮮だったこと

この場での私の役割は、いち消費者としての自分が、普段はあまり意識せずにとっている行動、その理由や基準を、聞き手から問われるままに言葉にし発話していくことです。

まず新鮮だったのは、いつもは語ることがない、意識することもない特定のテーマについて、他者から120分質問され続けること。
今この文章を読んでいただいているあなたは、例えば「自分や家族の衣料をどうやって入手し、捨て、新たに仕入れるか」というような営みについて、2時間にわたって聞かれ続けたご経験がどのくらいありますか?
もしそういった経験がなく、興味を惹かれましたら試しにやってみてください。
質問者や回答者が仮に配偶者や家族であったとしても、きちんとやれば面白いと思います。
ファシリテーターになりたい、ファシリテーションができるようになりたいという人は、ヒマつぶしや娯楽でなく、訓練と思ってやってみることをすすめます。なおあなたにとっては訓練でも、相手に訓練だ伝えてから行うべきかどうかも事前に考えてから取り組むとさらによいと思います。

視点のピックアップ

さて、私が個人的にこの120分インタビューから得た、ワークショップ設計やファシリテーションに関係しそうな視点をあげてみます。

  • 準備なしに、自分が日常で記憶している固有名詞や単語を、人はどのくらいのスピードで記せるものか。
  • 自分は、あまり親しくない質問者を相手に、聞かれたことへどこまで応えようとするか。
  • 言われた指示に疑問を呈さずに、自分はどこまで素直に従うか。
  • 質問されたその文言から、どこまで理解し、相手の意図を考え、その意向に沿うように、回答のもととなる想起をするか。頭の中に浮かんだ情報から、どういう順番で発言していくか。
  • 聞かれたときに頭の中に浮かぶ情報の量についての個人差。
  • 「即時の言語化」に関する個人差。
  • 質問する側のたたずまいと、回答者の答えやすさ。
  • インタビュー会場の選び方。
  • 言葉にすることの有用性と代償。
  • 何か意味のある結果を出したいという欲求との戦い。
  • 1つのことを考え続ける集中力、あるいは1つのことを聞き続ける集中力。
  • 相手が喜ぶように答えたい欲求との戦い。
  • 一次情報、二次情報とはいうけれど。「情報」とは何か。誰が見出すものなのか。
  • 聞く側を続けることの学習効果。答える側を続けることの学習効果。
  • 自分の内なる欲求が発見されること。
  • 対面で人が話し、人が聞くという行為から生まれるもののうち、AIで代替できること、できないこと。
  • スッキリ感、癒し(セラピー?)効果。

予想以上にたくさんの研究視点を得ることができました。

謝辞

質問者のお二人に改めてお礼を申し上げたく、また敬意を表したいと思います。
120分もの長い間つらつらと、とてつもない情報量を好き勝手に吐き出し続ける私の話にじっと耳を傾け、そもそもこのインタビューをすることになった背景が必要とする成果を得るために、有用な質問文を考え続け提案し続けるという行為は、控えめにいっても苦行であったことでしょう。人は、聞くよりは本当は話したい生き物らしいので。

記:ワークショップ設計所 後藤
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